ロイヤリティフリーの定義を再確認

同じ用語を使っていても写真と音楽ではこんなに違う

ロイヤリティフリーの定義を再確認

映像制作も含めて何らかのコンテンツ制作やコンテンツ利用をしている場合、今や当たり前のように使っている「ロイヤリティフリー」という用語。知っているようで知らないこの用語の定義、有るようで無いような定義。この記事では、改めてこの「ロイヤリティフリー」の意味について、写真の場合と音楽の場合を比較して考えてみます。また、最後には「著作権フリー」との違いにも触れておきます。

ロイヤリティフリーとは(写真の場合)

まず、「ロイヤリティフリー」という言葉に法的な規定があるわけではありません。ビジネスルールや業界慣習の積み重ねによって共通認識が形成されてきたものと考えた方が良く、そのため、解釈や定義にブレや若干の相違が存在します。

大原則に立ち返ると、写真にしても音楽にしても必要であれば撮影をする、オリジナル楽曲を作曲をするということになります。しかし、コンテンツ制作においてはコストやスケジュールの制約があり、すべてで撮り下ろしや作曲をするということは現実的ではありません。そこで、撮りためてストックされた写真やあらかじめ制作されてストックされた楽曲音源を利用するという選択肢が登場します。

写真の場合は、昔のアナログ時代にレンタルポジというライセンスのビジネスモデルがあり、それがデジタル化オンライン化したものが現在のストックフォトサービスとなります。物理的なポジフィルムを借りるという仕組みだったので、具体的なプロジェクト(広告キャンペーン等)ごとにライセンスを取得するということが必要でした。これが「ライツマネージドライセンス(RM)」の考え方のもととなります。これに対して、利用ごとにライセンス取得手続きをするのではなく、一度のライセンス取得で複数のプロジェクトに何度でも利用可能という緩いライセンスの仕組みが「ロイヤリティフリーライセンス(RF)」ということになります。


<ライズマネージドとロイヤリティフリー>

ライツマネージド(RM)ロイヤリティフリー(RF)
1つのプロジェクトに対する利用ライセンス一度ライセンス取得をすれば複数のプロジェクトに何度でも利用可能
利用期間の設定有り利用期間制限無し、または、包括契約期間中のみ
一定期間の独占利用が可能な場合も有り基本的に非独占利用のみ

ロイヤリティフリーとは(音楽の場合)

一方、音楽の場合は、前述の写真の場合とは違う考え方に基づいてロイヤリティフリーというものを捉えています。映像作品に音楽を利用する際には、写真とは違い、シンクロ権演奏権原盤権という3つの権利についてライセンス手続きが必要となります。(以下の記事参照)

この3つの権利のうち、シンクロ権と原盤権は映像作品を制作するタイミングで関わってきます。一般的にこれらについてのライセンス料は制作のタイミングに一度だけ発生します。ところが、演奏権については、音楽(を使っている映像作品)の利用ごとに使用料という形で発生します。この利用ごとに発生する使用料のことを「ロイヤリティ」と言います。そして、この利用ごとに発生するロイヤリティの支払いを、使用料相当額として制作のタイミングで発生するライセンス料と一緒に支払って、以降のロイヤリティの支払いを回避できるようにしたものが「ロイヤリティフリー」となります。

ロイヤリティフリーとは(音楽の場合)

写真と音楽が混在しているストック素材サービス

ここまで見てきたように、同じ「ロイヤリティフリー」という用語、仕組みでも写真の場合と音楽の場合で定義が違います。音楽のロイヤリティフリーは、どちらかというと写真のライツマネージドに近いものです。ただ、写真のロイヤリティフリーと同じように、複数のプロジェクトに何度でも利用可能という条件となっている場合もあり、そうなると結果的に写真のロイヤリティフリーと同じ認識で利用可能と言えます。それならあまり難しく考える必要は無さそうにも思えますが、前述のように元々の考え方が違うところで定義されていますので、全く同じだと思い込んでいると思わぬ落とし穴が有ったりもします。

現在は数多くのロイヤリティフリーオンラインストック素材サービスが利用できますが、そのほとんどが元々ストックフォトサービスから発展したものやそのフォロワーとしてスタートしたものです。そのため、規約やライセンスのルールは写真をベースにしたものになっていますが、イラストや動画フッテージなどは比較的同じように扱って問題はありませんが、音楽だけはそうもいきません。その理由は前述のようなロイヤリティフリーの考え方の違いと音楽のみに存在するPRO(音楽著作権管理団体)の世界的ネットワークという点があります。

このため、多くのオンラインストック素材サービスは、写真などと音楽を規約上で分けていたり、音楽にだけ適用される特別な規定が有ったりします。以下はAdobe Stockの規約からの引用ですが、規約の一番最初の部分で音楽と他のものを分けて定義しています。

1.定義

1.1. 「本オーディオ作品」とは、任意の Web サイト上で Adobe Stock アセットとして指定されているオーディオトラック(それに含まれるすべての録音、作曲、およびその他、音または一連の音が入った録音を含む)を意味します。ただし、「本オーディオ作品」には、本作品に含まれる可能性のある音声は含まれません。

(中略)

1.5. 「本作品」とは、Pro 画像(以下に定義)のほか、任意の本 Web サイト上で Adobe Stock アセットとして指定された写真、イラスト、画像、ベクター、ビデオ、3D アセット、テンプレートアセット、およびその他の絵画作品やグラフィック作品を意味します。明確さのために付記すると、本オーディオ作品は意味しません。

(出所:Adobe Stock ウェブサイト – Additional Terms)

このように同じサービスの中にあっても、音楽だけは少し扱いが違うということを利用の際に注意しておく必要があります。

ロイヤリティフリーと著作権フリーは意味が違う

ここからは少し余談になりますが、日本では以前から「ロイヤリティフリー」のことを「著作権フリー」と呼ぶことが多くあり、そちらの言い方の方が今でも浸透しているかもしれません。現在では、海外でもRoyalty-freeとCopyright-freeという用語の混乱はよく見受けられます。しかし、ロイヤリティフリー(Royalty-free)と著作権フリー(Copyright-free)は全く違うものだと考えた方が良いです。

著作権フリー(Copyright-free)の定義も曖昧ではありますが、概ね以下のように説明されることが多いです。

  • 著作権保護期間が終了し、パブリックドメインとなった著作物
  • 権利者によって著作権が放棄された著作物

前者は比較的わかりやすいですが、パブリックドメインという用語がちゃんとありますので、これをわざわざ著作権フリーと言うケースは多くないです。一方、後者の方はちょっとややこしいです。自動的に権利が発生する著作権を放棄できるのかどうかという議論があります。また、クリエイティブ・コモンズの「CC0」を利用して著作者が権利を放棄した旨を表示することも可能ですが、その効力については絶対とは言えません。

●参考:クリエイティブ・コモンズ・ジャパン ウェブサイト – CC0 FAQ

このように用語の定義、意味が世界共通で一つに統一できているというものではないので、「ロイヤリティフリー」と書かれているのでこういうことだろうとか、「著作権フリー」と書かれているのでこういうことだろうと思い込まずに、オンラインライセンスサービスを利用する際には、規約等でそのサービスがどのような意図や仕組みでライセンスを行おうとしているのか、どのような権利関係となっている素材を扱っているのかをしっかり確認してから利用することが大切です。

Royalty-free Lab 編集部