Royalty-free Musicとロイヤリティフリー音楽は別のもの??

そこに落とし穴!海外と日本とで解釈が違う

Royalty-free Musicとロイヤリティフリー音楽は別のもの??

現在は日本からも簡単に海外発のオンラインサービスを利用することができるようになりました。多くのストック素材サービスや音楽ライセンスサービスが表示している「Royalty-free」の看板。直訳すると当然「ロイヤリティフリー」という表記になります。ただ、そこに思わぬ落とし穴があります。この記事では、海外(特にアメリカ)と日本のルールや慣習の違いによるRoyalty-free Music/ロイヤリティフリー音楽の違いをみていきます。

黒船襲来!次々とやってくる海外発のサービスたち

以前からロイヤリティフリー音楽のライセンスサービスはありましたが、この10年で大きく様変わりしてきました。日本国内の事業者によるサービスに加えて、海外事業者によるサービスがインターネット経由で容易に利用できるようになりました。特にここ3-5年は、オンラインでの動画コンテンツのニーズの拡大に伴って、海外では新しい音楽ライセンスサービスが次々と立ち上がっています。そのどれもがウェブサイトに「Royalty-free」と表示しています。一部のサービスは多言語対応していて日本語での表示も可能ですし、そうでないサービスでもブラウザ側で自動翻訳を使って日本語表示にすることも可能です。その場合、「Royalty-free」は当然「ロイヤリティフリー」と表示されますので、日本人の私たちは、日本で一般的に想定される「ロイヤリティフリー」と同じものだと思って利用します。本当にそうなのでしょうか?

ストック素材サービスの場合

ストック素材サービスは、写真、イラスト、動画フッテージなどとともに音楽も扱うようになってきました。このサービスはもともとストックフォトサービスを出自にしているので、ロイヤリティフリーの定義が写真の考え方をもとにしたものとなります。ところが、写真と音楽とではロイヤリティフリーの定義が微妙に違いますので、その点で気をつける必要があります。(この定義の違いについては、以下の別記事にて解説しています。)

音楽系サービスの場合

音楽系サービスの場合、アメリカの特殊な業界慣習/ルールに依存する考え方があり、日本人が考えるロイヤリティフリーと実は大きく異なっているということが起こっています。どういうことなのか、日本でもよく利用されているサービスの規約やFAQを確認してみましょう。

PremiumBeatの規約を見ると「PROフリーと明記されている曲以外をテレビやラジオに利用した場合はPRO(音楽著作権管理団体)にキューシートを提出してください。」という記述があります。これは扱っている楽曲がPRO管理楽曲であるということを表しています。

3- Additional Terms For All License Types

Except for Recordings designated “PRO-free”, this license does not include public performance rights. For Recordings not designated “PRO-free”, in order to properly report music used in TV and radio productions, cue sheets must be filed with the networks, stations and appropriate PROs, and a copy must be e-mailed to support@premiumbeat.com. PremiumBeat will provide all cue sheet information upon request.

(出所:PremiumBeat ウェブサイト – Music Agreement)

Artlistの規約では、「私たちのライセンスはPROへのロイヤリティの支払いを含んでいません。」と書かれています。こちらも扱っている楽曲がPRO管理楽曲を含んでいることを表しています。

9. You have the rights for Public Performance & Broadcast

While our License gives you the right to perform the Projects in public, it does not cover payment of royalties to performance rights organizations (PRO).

If you or your client wants to use Projects in broadcast, the broadcaster shall make sure it has the relevant agreements in place to cover any such royalties.

(出所:Artlist ウェブサイト – Artlist License)

KeyframeAudio(Adobe Stockに音楽を提供しているサービス)のFAQでは、「シンクライセンス(シンクロ権の許諾)を提供しています。」と書かれていて、演奏権の使用料については含まれていないと読み取ることができます。

What does the Keyframe License cover?

Keyframe offers a universal sync-license which allows you to use the music and audio in any visual production worldwide royalty free.

(出所:KeyframeAudio ウェブサイト – FAQ)

このようにRoyalty-freeと表記しているサービスでも、その多く(ほとんど)はPRO管理楽曲を扱っているということがわかります。

放送利用以外がフリーならRoyalty-free?(アメリカの場合)

以前から、海外(特にアメリカ)のRoyalty-freeと称した音楽ライセンスサービスは、

  • PRO管理楽曲なので放送に利用したらPROに然るべき手続き(キューシートの提出)をしてください
  • PRO管理楽曲だけど放送以外は演奏使用料(ロイヤリティ)は不要なのでPROへの手続きは不要です

というスタンスとなっていました。これがスタンダードになり、今ではアメリカ以外の事業者が運営するサービス(例えばPremiumBeatはカナダ、Artlistはイスラエルが拠点)でも同じようなスタンスとなっています。

このスタンスは、日本人の私たちからすると謎でしたが、Music Revolution(Adobe Stockに音楽を提供しているサービス)のFAQにヒントがあります。

If I’m using this music as background music for my retail location, do I have to pay royalties to ASCAP or BMI?

No. The license agreement you receive when you license our music grants you what is called “direct performance license” for all non-broadcast usage. This is an arrangement where you (the licensor) and we (licensee) choose not to use a Performing Rights Organization as a licensing intermediary, which is fully permitted in ASCAP & BMI bylaws.

(出所:Music Revolution ウェブサイト – FAQ)

ここでは、「放送以外での利用についてはダイレクト・パフォーマンス・ライセンスによってPROを介さずに直接ライセンスされています。」という主旨のことが書かれています。確かにアメリカのPRO(ASCAPやBMI)にはダイレクトライセンスというルールがあります。このルールを利用することで放送以外の用途についてはダイレクトで許諾し、放送での利用のみ通常通りPRO管理とするのでRoyalty-freeなんだということのようです。しかし、これはルールの拡大解釈のようにも思えますし、それが認められたとしても、アメリカ国内限定のルールをグローバル展開するオンラインサービスに適用するのはリスクがあると言わざるを得ません。

その考えは日本では通用しない

PROには国際ネットワークがあり、各PROが相互の管理契約を交わしていて、アメリカのASCAPの管理楽曲であれば自動的に日本ではJASRACの管理楽曲ということになります。これは、日本ではJASRACの規定に沿った使用料徴収の対象となるということを意味します。アメリカ国内では前述のダイレクトライセンスというルールが適用されたとしても、日本ではそれは通用しません。ノンエクスクルーシブ(非独占)契約でPROと同時に権利者本人も許諾窓口になることができるアメリカとは違い、日本を含めたその他の国では、PROはエクスクルーシブ(独占)契約を基本としていますので、権利者本人の意思に関わらずPROの規定が適用されるルールだからです。(このあたりは以下の別記事参照)

ここまでのことをチャートにしてみました。

アメリカと日本の慣習/ルールの違いによるRoyalty-free Musicとロイヤリティフリー音楽の落とし穴

現在、海外事業者による音楽ライセンスサービス/ストック素材サービスではこのようなことが起こっています。こうなると、これらの楽曲をロイヤリティフリーと言って良いのでしょうか?無理だと言わざるを得ないでしょう。

日本人にとっての「ロイヤリティフリー音楽」とは

では、日本で利用する場合に「ロイヤリティフリー音楽」と呼べるのはどういうものになるのでしょうか。その重要な条件は以下となります。

JASRAC管理楽曲ではないこと = どこの国のPRO管理楽曲ではないこと

日本の事業者による音楽ライセンスサービスは当然この点が理解されているので、「ロイヤリティフリー」と書かれていたらその通りに受け取って大丈夫でしょう。

一方、海外の事業者の場合は注意が必要です。Epidemic SoundJamendo123RFはPRO管理楽曲を扱っていないことが規約等を読むとわかります。また、その他のサービスでも「non-PRO」「PRO free」というタグが付いている楽曲であればPRO管理楽曲ではない(権利者が虚偽の表示をしていない限り)と判別できるので、そういう楽曲を選ぶようにすることでリスク(=知らずにJASRAC管理楽曲を利用して、予定外の使用料が発生してしまうというリスク)を回避することができます。

このように、ルールや慣習の違いによって生じている海外(特にアメリカ)のRoyalty-free Musicと日本のロイヤリティフリー音楽の違いを理解した上で、安心できる音楽ライセンスサービスを選ぶことが大切となります。

Royalty-free Lab 編集部