商用利用と非商用利用の線引きはどこにある?

規約違反をしないための基礎知識

商用利用と非商用利用の線引きはどこにある?

日頃何気なく使っている「商用利用」「非商用利用(個人利用)」という用語ですが、いざその線引きがどこにあるのかを考えてみると曖昧なのではないでしょうか?有料契約の音楽ライセンスサービスやストック素材サービスを利用する場合は、基本的に商用利用可能(=当然非商用利用も可能)となっているはずですので、そんなに心配する必要はありません。しかし、利用料金が無料のサービスの場合は、その利用条件として意識をしておく必要があるかもしれません。この記事では、商用・非商用の定義や線引きについて、考察していきます。

「商用利用」とは

実用日本語表現辞典によると、「商用利用」とは以下のように定義されています。
「利用者が自分の利益を得る目的で、営利目的で、利用すること。 」

●参考:Weblio辞書 ー 実用日本語表現辞典

さらに、営利目的の「営利」を同じく実用日本語表現辞典で見てみると
「財産上・金銭上の利益を得る目的をもって事を行うこと。」
とされています。

●参考:Weblio辞書 ー 実用日本語表現辞典

となると、この「財産上・金銭上の利益を得る目的」にあたるのかどうかという点が商用・非商用の線引きのポイントになりそうです。実際の線引きは、それぞれのサービス(ライセンサー)ごとの考え方によるところが多く、すべてのサービスに共通する線引きが存在しているわけではありません。ただ、一般的な共通認識としての線引きはありそうですので、その例を見ていきます。

JASRACの例

JASRAC(日本音楽著作権協会)のウェブサイトの「インターネット上での音楽利用」のページに比較的わかりやすい記述があります。

これを整理すると以下のようになります。

収入有り収入無し
法人(企業)・個人事業主商用商用
個人・非営利団体・教育機関商用非商用

このように非商用とは、「個人・非営利団体・教育機関が行う、一切の収入のない利用」と定義され、反対にそれ以外はすべて商用と考えることができます。

いらすとやの例

無償イラスト素材で人気のいらすとやの場合を見てみましょう。

このように「規約の範囲内であれば、個人、法人、商用、非商用問わず無料でご利用頂けます。」と書かれており、商用でも無料で利用できることがわかります。ただし、商用利用の場合は点数制限があり、非商用利用の場合はその制限がないというルールになっているようです。このサイト上には、商用と非商用をどのように規定するかの記述はありませんので、自分の利用が商用なのか非商用なのかの判断は一般的な線引き(上記JASRACの例など)で行うか、判断できない場合は問い合わせるなどの必要があるでしょう。もしくは、判断に迷う場合は商用だと思って対応するという安全策もあります。

この「いらすとや」の商用利用での点数制限については、先日ITmedia NEWSに興味深い記事が掲載されていました。記事によると企業内で作成されたプレゼン資料(商用利用にあたると考えられる)に規定をこえる数のイラスト素材を利用していたことです。記事内にも書かれていますが、利用規約を読むことは本当に大切です。

●参考:ITmedia NEWS – 「いらすとや」の無償利用は何点まで? 「意外と知られていない」とTwitterで話題に

企業での利用はすべて「商用」?

次に観点を少し変えて、法律(著作権法)ではどうなっているのかを見てみましょう。

著作権の制限(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

出所:e-Gov法令検索 – 著作権法

これは著作権の権利制限規定(権利者がその権利を行使することを制限する=権利者の許諾不要で利用できる)についての条文ですが、ここに書かれているように「私的使用」(=個人利用、非商用利用と近いがそれよりも狭い範囲を指すと考えられます)とは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と定義されています。

そして、著作権法解釈のバイブルと言われている「著作権法逐条講義」では、この条文の解説の中で下記のように、企業内における著作物の利用(複製行為)については、「私的利用」には当たらないとはっきり書かれています。

会社等における内部的利用のための複製行為は、よく問題になりますけれども、著作権法上の「家庭内に準ずる限られた範囲内」での使用には該当いたしません。

出所:著作権法逐条講義(公益社団法人著作権情報センター刊)

このように著作権法上では、企業内での著作物の利用はすべて商用利用(=私的使用ではない)という解釈になります。この解釈は現状と乖離していて厳しすぎると疑問を呈する法学者の方もいますが、多数派はこの解釈を支持しています。

やはり企業内でのイラスト、写真、音楽など著作物の利用については、すべて商用利用となると思って対応することが安全なようです。企業=営利を目的として活動している、という点で考えても理解しやすいところです。これは社内のみで利用する資料についても当てはまることなので注意が必要です。(前述のいらすとやの記事の例)

判断の難しいケース

ここまで見てきたように、ただひとつの定義があるわけではありませんが、前述したJASRACの例が線引きとしては一般的な認識に近いと言えます。
・非商用=個人・非営利団体・教育機関が行う、一切の収入のない利用
・商用=上記以外の利用

「いらすとや」のように商用と非商用でルールが違うサービスであったり、無料で利用できるのは非商用のみ(=商用利用不可)としているサービスを利用する際は、上記の線引きを意識しつつ、各サービスの規約やFAQを確認の上で判断するということが求められるでしょう。

最後に、少し判断の難しいケースを考えてみます。収益化していない(できていない)個人のYouTubeチャンネルはどう考えるべきでしょうか。収益化していれば商用、していなければ非商用という考え方もあるかもしれません。無料の素材提供サービスでは、実際にそこで線引きをしているところもあります。この点については、ニコニコ大百科の商用利用のページの記述がわかりやすいです。

このように「素材提供者によって判断が分かれる」ものとして解説されています。もし、現時点では収益化できていなくても、それを目指しているのであれば、最初から「無料で使えるが収益化は不可」のサービスではなく、「収益化していても無料で使える」or「有料で商用利用可能」のサービスを利用しておく方が安全だと言えるでしょう。

Royalty-free Lab 編集部